COLUMNコラム

植物の水やりについて

2018.08.01

お客様のオフィスに伺うと、観葉植物について一番多く相談を受けるのが「水やり」です。
水を切らして枯れさせてしまったり、逆に水やりしすぎて腐らせてしまったり。
たかが水やりといっても、一体どのくらいが「ちょうどいい」のでしょうか。
毎日植物と向き合う私たちでも、これが絶対正解とは言いにくいものです。
植物は生き物でそれぞれに特性があり、置かれる環境も違います。
多くの植物における水やりの必要性を知り、また目の前の植物がどのような状態なのかを考えることにより、皆さんもちょっとしたコツをつかめるかもしれません。植物と気軽に付き合うために、一度しっかり知ってみませんか</

■書を読むと書いてあること
ほとんどの園芸本には、水やりの基本は土が乾いたら鉢底から水が出るまでたっぷりと、鉢底から出た水は溜めずに捨てましょうと記載があります。その通りできればもちろんいいのですが、仕事をしながらいつでも植物の様子を観察するのは難しいこと。そうすると、気付いた時には・・・すでに植物の見た目に変化が出てしまっている場合が多いのです。

 

 

■なぜ水やりが必要なの?
そもそも、植物にはなぜ水やりが必要なのでしょうか。水は人間や動物にとってもですが植物が生きていくうえで極めて重要な働きをしています。植物は光合成を行うために大気から二酸化炭素を取り込む必要がありますが、同時に水分消失や脱水の脅威をこうむることになります。葉の乾燥を防ぐため、水は根で吸収され植物の体を通して輸送されます。水の吸収や輸送、大気への水分消失のバランスが崩れると、水不足や多くの細胞活動に機能不全が引き起こされます。このように、水の吸収、輸送、消失のバランスを保つことは植物ににとって重大な課題なのです。

 少し学術的な説明になりましたが、理科で習ったように根で吸収される水のほとんどは、植物の体を通して運ばれ、葉の表面から蒸発します。この水の消失を「蒸散」と呼ばれます。蒸散する水の量は根で吸収された水の97%と言われています。残りの2%が成長に使われ、1%が光合成や他の代謝過程の性化学反応に消費されます。

 光合成を行う上では蒸散は避けることのできないことです。二酸化炭素の取り込みと同じ経路で水分は消失します。二酸化炭素を1取り込むとすると、400の水分を失うと言われます。このように、水が植物の生理機能に重要な役割を果たすことがわかります。

 

 

■水やりのコツ

 水やり3年、10年とも言われるくらい、植物を管理する上で重要で難しい作業だと言われることもありますが、植物のリズムをつかめば難しく考える必要はありません。土の表面が乾いたらあげるという基本を守って下記の手順で水やりを始めます。

 

例えばお祝いの植物が届いたら、、、

①ギフトで届く植物は、水切れした状態で届くことは少ないと思います。元気なまま管理するためには、できれば日光が入る明るい環境に植物を設置します。そのような環境がないオフィスではそれに近い場所に置いてあげましょう。(たまにしか使わない会議室や、スポットライトしかない受付などは株が弱くなる場合があります。)

 

②鉢底に水漏れ防止のお皿などがあるか確認し、土が乾いていたら500ml程度水をあげます。ラッピングがしてある場合は取り外しておくと管理しやすいです。そのまま水やりをして水があふれ出てしまうとオフィスの床に跡になってしまうことがあります。

 

③次に水を上げるタイミングは、土が乾いてからですが、植物の種類やオフィスの環境によって異なります。最初のこの乾く間隔をつかむことが大切です。2,3日で土が乾いてしまうようなら水の量を増やしてみましょう。

 

④水量を調節し、土が乾く間隔が安定してくれば管理しやすくなります。多くは1,2週間に1度の間隔で水やりするようになると思います。暖房や冷房などオフィス環境にも左右されますので、暑くなり冷房をかけ始める時期、寒くなって暖房をかけ始める時期には水やりの量や間隔を調整してあげましょう。

 

 

■土が乾いてから水やりをするのはなぜか

 水切れが心配でついつい多めに水を上げてしまったことがある方もおおいのではないでしょうか。鉢底に水がたまりすぎて根ぐされを起こす恐れがあること以外に、土が乾いてから水やりする理由があります。

 土の表面が常に湿っているのに水やりをすると、植物の根は水で飽和状態にあり、おぼれた状態になります。そうすると根は呼吸が出来なくなって窒息状態になります。また、いつも水が身近な所にあるため、新たな根をのばしたり、しっかりした根を発達させたりしなくなります。そのような根だと一旦乾燥状態が続いてしまうと植物はダメージを受けやすくなってしまい完全にしおれたり、枯れてしまいます。

 それに対し、土が乾いてから水やりをすると土の表面から鉢底までスムーズに水がしみこんでいき、根に酸素を供給することが出来ます。

 

 

■どの植物でも水やりは必要です

 よく管理が簡単な植物はありますかと質問を頂くことがあります。管理の中でも手間なのがやはり継続的な水やりですが、水やりをしなくてよい植物はありません。エアプランツや多肉植物のように水分条件が良くない乾燥地でも生きていけるように発達した性質の植物はありますが、水やりの量や頻度が少なく済むということで水をあげなくてもよいというわけではないのです。

 

 

■葉っぱの水やり:葉水

 人間同様、植物も暑いときは体の温度を下げる為に葉の表面の気孔から水分を蒸散しています。そのため、夏や日当たりのよいところで植物はよく水を吸い、光合成をして、丈夫に育つのです。

 また、乾燥しがちなオフィス環境では葉の表面にハダニやホコリがつき易くなります。霧吹きや濡れタオルで葉を拭いてあげることで予防になり、植物を美しく保つことが出来ます。ホコリを取り除くことで光合成を促進することにもつながります。

 

参考文献:「園芸「コツ」の科学」、「テイツ/ザイガー植物生理学・発生学」